入島制限条例

 『法令データ検索日誌(http://d.hatena.ne.jp/washita/20081118/p4)』や『自治体法務の備忘録(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20081117/p3)』、『徒然ならざる自治体法務 (http://d.hatena.ne.jp/schwantner/20081117#p2)』で既に触れられていますが、

 来年7月22日に今世紀で世界最長の皆既日食が見られる鹿児島県十島村はこのほど、観測ツアーの計画を発表した。定員1500人で26日に募集を始める。人口620人の有人7島の村は観光客が殺到するのを心配し、入島を制限する条例案を検討している。
 ツアーを委託された近畿日本ツーリストがホームページ(HP)で参加の意思を尋ねたところ、約2万2千人が「参加したい」と回答。「参加希望者は定員の10倍以上」と予想する。
 だが、水や電気は島民とツアー客の分しか確保していない。村幹部は「他の入島者で島があふれ返ると、島民の暮らしが脅かされかねない」。そこで入島を制限する条例案を模索中だ。皆既日食の前から島に入った人の野営を禁じ、船で許可なく上陸できないようにする内容を検討してきた。
 村から相談を受けた県市町村課の担当者は「憲法22条で保障されている居住・移転の自由に抵触する可能性がある」と指摘。「条例を全国に周知徹底しないと、来てしまってからでは意味がない」と助言した。
 村の担当者は「島民が平穏な生活を送る権利もあるのに」とこぼした。福満征一郎・副村長は「条例を制定するなんて悲しいこと。入島者の良心に期待したいが、直前まで対応策を考えたい」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/1117/SEB200811170026.html

 まー、憲法上の疑義は出るかもしれないが、島民の安寧な生活の確保という要請もありますしなぁ。
 まー、条例を作ることは可能ではないかと思います、個人的には。
 一律入島禁止とはいかなくとも、一時的な許可制にするとか、制度設計は、一応可能でしょうね。
 問題は、どうやって実効性を担保するのか、ということ。
 島中、見張りますか?
 無断で入島しようとする人を、実力行使で退去させること(直接強制)が出来ますか?
 おそらく、引き返してもらうことをお願いすること(行政指導)しか出来ないのでは?
 現実的に対応できることがあるとすれば、入島を制限することではなく、あらかじめ旅行代理店と調整したり、島内での行動について網をかけることではないかと。

労働基準法の一部改正

 月に60時間を超える部分の残業代割増率を50%以上に引き上げる労働基準法改正案が18日、衆院本会議で自民、民主、公明、国民新党などの賛成多数で可決した。今国会中に成立すれば10年4月に施行される。
 現行の時間外労働の賃金割増率は一律25%。政府は月80時間を超える部分の残業に関し、割増率を50%以上に引き上げる法案を国会に提出していたが、与党と民主党は「50%以上」の適用基準を「月60時間超」部分の残業に拡大することで合意していた。中小企業には当面、適用を猶予するほか、月45時間超〜60時間の割増率は25%を上回るよう努力義務を課している。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081119k0000m010010000c.html

 あれ?国会、動いてるの??
 個人的な概要は以下のとおり。

(1)1ヶ月の時間外労働時間が60時間*1を超えた場合は、その超えた時間分の時間外単価については、通常の単価の100分の150以上とする(新第37条第1項ただし書)。
(2)一定の場合においては、(1)による割増賃金を支払うことなく、有給休暇ではない賃金が支払われる休暇をもって、(1)による割増賃金に替えることもできる(新第37条第3項)。
(3)一定の場合においては、5日分を限度として、時間単位での有給休暇の取得が認められる(新第39条第4項)。
(4)中小企業については、当分の間、(1)は適用しない(新第138条)。

 新旧対照表*2
  →http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/166-10c.pdf
 上記(1)については地方公務員にも適用になります。なので、場合によっては条例等の改正が必要かもしれません。
 上記(2)については、地方公務員法第58条第3項で適用除外されるよう、附則で同項が一部改正されています。
 上記(4)については、正直よく分かりません。労働基準法の「資本金」という概念が地方自治体にあるのか、というと、ないような気がするので、おそらく適用にはならないかも。いや、なるかも。
 気になったのは、上記(3)の内容。
 該当条文は以下のとおり。

労働基準法(ノーマルバージョン)
第39条
4 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る。)
三 その他厚生労働省令で定める事項

 公務員の世界では、時間単位の有給休暇はけっこうポピュラーですが、日単位に換算した場合の上限を設けている例は、あまり知りません。
 で、労働基準法上の上限が定められたのかと思いきや、これまた附則において地方公務員法第58条第4項が改正され、

地方公務員法
第58条
4 職員に関しては、(中略)、同法(労働基準法)第39条第4項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより」とあるのは「前3項の規定にかかわらず、特に必要があると認められるときは、」とする。

 となり、この読替え規定を労働基準法第39条第4項に反映させると、

労働基準法地方公務員法第58条第4項の規定による読替え後)
第39条
4 使用者は、前3項の規定にかかわらず、特に必要があると認められるときは、時間を単位として有給休暇を与えることができる。
一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)
三 その他厚生労働省令で定める事項

 となります。
 このとき、読替え前の各号列記以外の部分の「第2号に掲げる日数について」という上限規定や「次に掲げる事項を定めた場合において」という各号の根拠規定などが無くなっていて、「結局、上限はどうなるの?」という疑問が生じます。
 まぁ、上限規定も無いから、5日という上限はないものと解釈できるのかなぁ、各号の根拠規定が消失し、各号の存在意義も同時に無くなるため、各号は存在しないものと解釈できるのかなぁ、なんて。


 ※「http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20081224/p1」に追記。
 ※「http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20100123/p1」で一部変更

*1:当初案では80時間

*2:修正前のものです。